【クリエイターの作品を世界へ発信】CrossVision代表取締役 奥井 颯平氏にインタビュー

インタビュー

今回は、音楽NFTプラットフォーム「Sound Desert(サウンドデザート)」を手掛ける株式会社CrossVisionの代表取締役 奥井 颯平氏(@Baku_XV)にインタビューを行いました。

  • CrossVisionではどんなことをしているの?
  • 音楽NFTプラットフォームはどのようなアイデアから生まれたの?
  • クリエイター文化にNFT技術を取り入れるとどんなメリットがあるの?
  • 今後はどのような展開を考えているの?

などの疑問にお答えいただき、CrossVisionの取り組みについてお伝えしていきます。

以下の記事でご紹介したように、CrossVisionは2024年5月に5,500万円の資金調達を実施しています。この資金調達の詳細についても、お話を伺いました。
参照:CrossVision、NTTドコモとVC2社から5,500万円の資金調達を実施。

漫画やアニメ、VTuberなどサブカルチャーの魅力を発信したい方、デジタルコンテンツの自由な取引に興味のある方、NFTを活用して課題解決を行いたい方はぜひ最後までご覧ください!

Web3を通じて、クリエイターとファンをつなぐ

Q. まずは奥井様の自己紹介をお願いします。

CrossVisionで代表取締役を務めている奥井と申します。

私はもともとNTTドコモの社員であり、NTTグループ内で生成AIや自然言語処理の研究に従事していました。その過程で偶然にも別の分野であるWeb3技術に取り組む機会を得たのです。このWeb3技術との出会いをきっかけにして、ブロックチェーンを駆使した音楽NFTプラットフォーム「Sound Desert」を開発しました。

Q. CrossVision創業のきっかけについて、教えてください。

CrossVisionの創業に至ったきっかけは、2022年に開催されたNTTドコモグループの社内における新規事業創出プログラム「ZERO ONE DRIVE」です。このコンテストに「Sound Desert」でエントリーしたところ、金賞とオーディエンス賞を獲得できました。この結果を受けて、事業化に向けた準備をNTTドコモ社内で進めてきました。

2024年1月には「Sound Desert」の事業を推し進めるための法人としてCrossVisionを設立しています。そして、2024年6月にはNTTドコモと独立系ベンチャーキャピタルの2社から5,500万円の資金調達を実施し、NTTドコモからスピンアウトする形でスタートアップとして正式に始動しました。

Q. CrossVisionの事業内容について、教えてください。

CrossVisionの主力事業は、以下の3つです。

  • 音楽NFTプラットフォーム「Sound Desert」
  • VTuber向けデジタルコンテンツ販売サイト「V-tamp」
  • 法人向けWeb3コンサルサービス

CrossVisionでは、「デジタルグッズを科学していく」という事業の軸を貫いています。日本には、アニメや漫画など世界に誇れるIP(知的財産)コンテンツが豊富にあります。デジタル上にあるIPコンテンツの場合、在庫や輸送のコストがかかりません。そのため、日本が今後のグローバル市場で活躍する上で、デジタル上のIPコンテンツが重要な役割を果たすはずです。

そこで、デジタル上でコンテンツを自由に販売できる環境を整備するなど、CrossVisionではデジタルコンテンツ経済の構築を進めています。

NTTドコモグループの新規事業創出プログラムをきっかけに誕生したサービス

Q. 「Sound Desert」について、サービスの概要をお聞かせください。

「Sound Desert」とは、アーティストが自身の音楽をNFTとして販売できるプラットフォームです。音楽NFTの保有者しか楽曲を再生できない仕組みの他に、NFTホルダーに対してアーティストが直接メッセージを発信できるなど、ファンとの結びつきを強化できる点が特徴です。

ストリーミングやサブスクサービスが登場したため、ミュージシャンの中には収入が減少してしまった人もいます。そのようなクリエイターに対して、収益獲得の新しい手段を提供しています。

Q. 「Sound Desert」が誕生したきっかけをお聞かせください。

2021年頃に大躍進を遂げたNFTクリエイター達の姿が、「Sound Desert」誕生のきっかけになりました。

私はプライベートにおいて個人イラストレーターとして活動していたため、NFTプロジェクトの動向にも早い段階から関心を寄せていました。2021年頃のNFT業界は、まだ大企業や大物クリエイターがほとんど参入していない時期です。このような中で、無名のクリエイターが世界中のファンを獲得し、一躍して注目を集めるようになった光景を目の当たりにしたのです。トークンを通じてファンと密接な関係を構築するクリエイターのあり方に、私は大きな可能性を感じました。

また従来の下請け構造とは異なり、イラストレーターが主体となって活動している様子も私にとって大きな衝撃でした。新たな産業構造が形成される様子を肌で感じ、民主的なクリエイターエコノミーが発展すれば、よりワクワクする世界が生まれると期待に胸を膨らませたのです。

この体験から個人クリエイターの時代が来ると確信し、エンタメ領域でイラストの次には音楽が台頭するとの予想から、音楽NFTプラットフォーム「Sound Desert」の着想を得ました。

Q. NFT技術の導入によって、どのようなメリットが生まれるのかをお聞かせください。

デジタルコンテンツを自由に流通させられる点が、NFT技術によって得られるメリットです。レコードやCDなどのエンタメ商品にはコレクション性があり、実際に希少価値の高いアイテムは高値で取引されています。

NFT技術を活用してデジタルコンテンツにもオリジナル性を付与できれば、デジタル上のアイテムにも流動性が生まれるはずです。

Q. 「Sound Desert」の導入事例をお聞かせください。

「Sound Desert」は、これまでに複数の音楽イベントで採用された実績があります。その事例のひとつが、香川県で開催された5万人規模の野外ロックフェス「MONSTER baSH 2023」です。このイベントにおいて、来場者向けに限定NFTを配布しました。この他に、「ASO ROCK FESTIVAL FIRE 2023」でも「Sound Desert」が採用されています。

「Sound Desert」を活用することで、ブロックチェーンに馴染みのなかった音楽ファンにもNFTを届けることができました。今後は配布したNFTにさまざまな特典を付与し、NFTを所有する意義を高めていく必要があると考えています。

NTTドコモとVC2社から5,500万円の資金調達を実施

Q. 2024年5月に、CrossVisionは5,500万円の資金調達を発表しました。今回の資金調達を実行した理由について、お聞かせください。

事業の特性として、初期段階で開発やマーケティングのコストが必要となるためです。まだ市場が形成されていない先端領域でビジネスを展開する場合、先行者優位を得るために一定額の資金投入が欠かせません。このような理由から、今回の資金調達に至りました。

また副次的な理由としては、NTTドコモからスピンアウトする条件として外部の投資家からの資金調達が必要だった点も挙げられます。言い換えると、NTTドコモ社内の評価だけでなく、第三者であるベンチャーキャピタルの投資判断にも耐えうる事業計画を描けているか確認する意図もありました。幸運なことに、この度ゼロイチキャピタルとライトアップベンチャーズからチャンスをいただき、出資していただく運びとなりました。

Q. 投資家であるベンチャーキャピタル2社について、CrossVisionとの関連性をお聞かせください。

まずゼロイチキャピタルに関して、代表パートナーである種市さんはeコマースやライブ配信の分野で豊富な知見をお持ちです。この分野において、CrossVisionの事業との親和性が高いと感じています。

次に、ライトアップベンチャーズの代表パートナーである中村さんは、私と同じ関西出身です。関西初の独立系ベンチャーを立ち上げ、関西地域を盛り上げようと活動されています。Web3はグローバルの要素を持ちつつも、一方で地域に根ざしたプロジェクトとも相性が良いです。そこで、関西を中心としたビジネス展開の可能性も広がると期待しています。

Q. 資金調達にあたり、特に意識した点をお聞かせください。

シードラウンドの段階であり、かつWeb3というニッチな分野であったため、「いかにしてプロダクトマーケットフィットを実現するか」という戦略に力を入れました。

NFTが登場し始めた頃とは異なり、昨今における投資家の関心事項は「現実的な観点でどのように社会実装を実現させるか」にあります。この要求に応えるため、私はスピード感を大切にしつつ、できる限り多くの挑戦を繰り返しています。

Q. 今回の資金調達を経て、今後はどのような取り組みに注力していくのかお聞かせください。

今後は、VTuber向けの推し活グッズ販売サービスの顧客検証に力を入れていく計画です。

VTuberの視聴者層向けサービスを通じて、Web3に触れた経験のないユーザーにも裾野を広げていきます。そして、いずれはNFT技術を駆使した機能の導入も検討しています。将来的には、VTuberの推し活に「Sound Desert」を組み込む構想も描いているところです。

クリエイターのデジタルコンテンツを世界へ届ける

Q. 事業を推し進める上で課題に感じている点があれば、お聞かせください。

現状で苦戦しているのは、「デジタルの無形商材を買い集める」という消費行動が世間一般に根付いていない点です。

かつてソーシャルゲームが世に登場した当初は、「ソシャゲに課金する」という発想はなかなか理解を得られませんでした。しかし次第に、「ゲームを楽しむ目的ならば課金にも意義がある」という認識が広まっていったのです。

これと同様、デジタルコレクションに対する人々の認識が変わるまでには、長い期間を要するでしょう。ただ、デジタルコンテンツに確かな価値が付帯していれば、将来的には人々に必ず受け入れられるはずです。このような将来を見据えつつ、今の段階では価値あるデジタル商品の普及に力を入れていきます。

Q. 「デジタルコンテンツ×NFT」で実現したいビジョンについて、お聞かせください。

クリエイティブの仕事を後世に受け継いでいくために、「クリエイター達が創作活動で生活していける未来」というビジョンの実現を目指しています。この目標に向かい、私はデジタルコンテンツの販路拡大や経済圏の構築に尽力しているのです。

私自身、個人のイラストレーターとして活動するほど、日本のクリエイティブ文化が大好きです。素晴らしい作品を生み出すクリエイター達には今後も仕事を続けてほしいと願っており、それを実現するためにCrossVisionで事業に取り組んでいます。

Q.  「Sound Desert」に興味を持った方に対して、メッセージをお願いします。

「Sound Desert」の導入によって、デジタルグッズと連動したイベントの実現が可能となります。これまでにも複数の音楽フェスにおいて採用された実績があるように、マス層の音楽ファンにデジタルコンテンツを配布する手段として有効です。イベント主催者の方で「Sound Desert」に関心をお持ちの際は、ぜひCrossVisionまでお問い合わせください。

また、Web3に興味を持ち「なにか新しい挑戦をしたい」と考えるクリエイターの方からも、ご連絡をお待ちしています。

Q. 最後に、読者の方へお伝えしたいメッセージなどございましたらお願いします。

2024年6月23日に、新たなサービス「Vtamp(ブイタンプ)」をリリースする予定です。このVtampはライブ配信と連動してNFTを配布・販売できるプラットフォームであり、VTuberとファンの関係性を強化できます。マス層の利用者に向けたサービスであるため、NFTの裾野をさらに広げられるはずです。

個人勢のクリエイターがより活動しやすくなる未来を目指して、CrossVisionでは今後もクリエイターが創作に集中できる環境の整備を進めていきます。もしクリエイターとして活動する上で悩みを抱えているなら、ぜひCrossVisionまでご連絡ください。

取材・文:ダンパー長野

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